磯臭い魚の代表格「アイゴ」。
サバく前も臭いけど、煮付けにするともっと臭い。
それなのに何故か病みつきになってしまう不思議な美味しさ、体験してみませんか?
アイゴの煮付けの簡単な作り方と非日常感溢れる味わいを紹介します。
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お取り寄せした大量の魚の下処理を終えて、もうお腹ペコペコです。
時間も遅くなったので今日の晩酌はサッと済ませたいところ。
優先的に食べた方が良いアイゴとニザダイのうち、下処理で二枚におろしたアイゴの半身を煮付けにすることにします。
アイゴの臭みと相性が良さそうなゴボウと一緒に煮付けてみます。
アイゴの煮付け
頭付きの半身をさらに半分に切り、
湯引きします。臭みのない魚は味が抜けるのを防ぐために湯引きしないことが多いですが、臭みの強いアイゴはしっかり目に。
湯引きしたアイゴと適当な大きさに切ったゴボウを鍋に入れて火にかけ、酒・みりん・砂糖を加え、
軽く煮立ったら落し蓋をして5分くらい煮ます。
最後にたまり醤油を回しかけ、火を止めて味を染み込ませ、
お皿に盛って完成です!
たくさんのお取り寄せ魚を処理して、もう喉がカラカラです。まずはビールを一杯ぐびり。
そんな時でも絶えず鼻をつくアイゴ臭…
恐る恐るまずは一口、いただきます!
・・・んっ!?
モワっとした臭いが口いっぱいに広がります。
感じたことのない臭みに面食らい、ゆっくり味わうどころではありません。
気を取り直してもう一口…
・・・お!?
「クサイ臭い」というよりは「強烈な個性のある香り」のような気がしてきました。
その上、身質は意外にもかなり上品。カワハギやウマヅラハギの煮付けを彷彿とさせるしっとりとした白身です。
そのギャップが愉しく、一口、また一口と箸を進めるうちにだんだん病みつきに。
ムワ~っとした香りは南方の生暖かい空気を連想させ、なんとも旅情を誘います。
強烈な香りとそれが醸す南国的な雰囲気に半ば酔うように夢中で食べ進め、食べ終わる頃にはすっかりアイゴの虜になっていました。
アイゴが持つ圧倒的な南国感は何なのかしらと思って調べると、アイゴの仲間は亜熱帯や熱帯を中心に分布しているようで合点がいきました。
白身魚を泡盛で煮る沖縄の郷土料理「マース煮」にも、アイゴがよく使われるのだとか。
また良いアイゴが手に入ったらマース煮にチャレンジしてみようと思います。
お取り寄せ魚を使った「まるサバごはん」シリーズの幕開けにふさわしい、非日常に誘う魅惑の一皿でした。
(→お取り寄せ魚の「まるサバごはん」シリーズの次の記事:「臭い?不味い?とんでもない!まさかの美味しさ「ニザダイ(サンノジ)」の洗い」)
小話
昔お会いした京都の漁師さんが「アイゴの煮つけが好物だ」とおっしゃっていたのを思い出します。
それまでアイゴのことを「釣れるとやっかいな臭い毒魚」としか思っていなかったのに、この瞬間から「魚通が食べる玄人好みの魚」という認識に変わり、憧れの対象になりました。
ただ、アイゴはなかなか流通に乗らない「未利用魚」です。
それから何年か経ちましたが、魚屋でアイゴに出会うことはついぞありませんでした。
今回、信頼する漁師さんからしっかり処理されたものが届いたので、それはそれは楽しみに食べたのです。
やはり癖があるので、魚を食べ慣れていない方はお好きじゃないかもしれません。
臭いと言ってしまえばそれまでなのですが、私としてはそれは決して不快なものではなく、個性と野趣あふれる魅力的な味に感じられました。
魚を食べ慣れている方は、処理の良いものを手に入れて是非召し上がっていただきたいなと思います。
きっと、魚食文化のより深遠な世界を垣間見るような心躍る体験ができるはずです。
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