あまり見かけることのないヒゲソリダイですが、見つけたら儲けもの。
奇妙な名前と内臓の臭さにそぐわない、高級魚の美味しさを味わえます。
その上お手頃価格でお財布にも優しいニクイやつ。
ヒゲソリダイの刺身・炙り・オーブン焼きの作り方と、コスパ抜群の美味しさを紹介します。
・・・・・・・・・
日曜日の鮮魚売り場パトロールでマナガツオと一緒に買った魚、ヒゲソリダイ。
味より何よりまず気になるのは、「ヒゲソリダイ」という変わった名前ですよね。
実はこの魚、ヒゲダイ属というグループに分類されていて、顎の下に綺麗に刈り揃えたようなヒゲが生えています。
これに対し、このグループの代表種であるヒゲダイはヒゲぼうぼうです。
ヒゲダイのヒゲを綺麗に剃ったように見えるので、ヒゲソリダイというんですね。
今回の個体は30センチ弱で300円強というビックリのお値段でした。
安さの理由として知名度の低さやロットのまとまりにくさが挙げられますが、今回は状態の悪さも一役買っているかもしれません。
スーパーで目利きした時もエラの色が薄く鮮度が心配でしたが、いざお腹を開いてみると内臓がかなり臭い!思わず怯んでしまうような臭いです。
内臓の臭いが身に移らないよう、細心の注意を払って三枚おろしにします。
身も臭かったらイヤだな~と端くれを恐る恐る口に入れてみると…ホッ、身に臭みはなく、生で食べても問題なさそう。
格安ヒゲソリダイの「まるサバごはん」、まずは刺身からスタートです!
ヒゲソリダイの刺身・炙り刺身
普通に刺身にするだけじゃ面白くないな~と思い、少し工夫することに。
三枚におろした半身から小骨を抜き、皮は全部引かずに頭側の半分を残しておきます。
皮を境に二等分して、
皮を引いた半分を刺身にし、皮を残した半分をバーナーで炙れば…
一サクで二度おいしい?ヒゲソリダイの刺身と炙り刺身の完成です!
鮮度バツグンとは言えないにもかかわらず、血合いが綺麗なサーモンピンクでなんともグッドルッキング。
お味はどうかな?いただきます!
・・・おいし~い!!
臭みは全く無く、脂がたっぷり乗っていて身の締まりが良い、上質な白身です。お腹を割いたときの臭い方からは想像もできません。
セトダイ(これもヒゲダイ属)と近縁だけあって、味は似たものを感じます(何をもって近縁というか?詳しい話はこちらをどうぞ)。
皮はハタやサヨリのように抜群に美味しいというわけではないものの、独特の香りがあり刺身との食感の違いも楽しい!
お値段以上ヒゲソリダイ♪300円台で買ったとは思えないほど、満足度の高いお刺身でした。
ヒゲソリダイのレモン風味オーブン焼き
刺身の残りの半身はいつものようにリードとラップで包んでチルド室に入れておきました。
とは言え、買った時点で鮮度があまり良くなかったのですぐに食べるべきでしたが…仕事でバタバタしていて3日も経ってしまいました!
少し生で味見してみると…
さすがにちょっと臭います。
臭みを消すためにしっかり下味を付けて加熱調理にすることに。
小骨を抜き、塩レモン(常備している自家製調味料)を揉み込みます。
すりおろしたニンニクを刷り込み、コショウを振ってローズマリーをパラパラと散らし、冷蔵庫で1時間くらい寝かせて味を染み込ませます。
くし形切りにした玉ネギと一緒に200度のオーブンで6~7分焼けば、ヒゲソリダイのレモン風味オーブン焼きの完成です!
臭みはどうなっているでしょうか…いただきます!
・・・!おいしい~~~~!!!
臭みは全く感じず、刺身に比べて旨味が段違いに強くなっています!
加熱しても硬くならないという評判通り、身質はしっとりでパサパサ感は皆無です。
塩レモンとの相性もバッチリですが、旨味がしっかりある魚なのでもっと濃いめのスパイスとも互角に渡り合えそう。
臭みが出やすいという欠点はあるものの、色んな味付けで美味しくカモフラージュできそうです(そもそも内臓が臭い時点で早めに食べろよって感じですが…)。
なんといっても300円強という安さで、味は間違いなく高級魚クラス。
お口にもお財布にも嬉しい、大満足の「まるサバごはん」でした。
ちなみに、このレモン風味オーブン焼きと同じ日に作ったのがマナガツオのアラのうつし豆腐。
なんてまとまりのない食卓なんだ…
小話
上でも触れたヒゲダイ属は日本~インド~オーストラリアにかけて分布するグループです。
日本でよく見かけるのはヒゲダイ・ヒゲソリダイ・セトダイの3種。
シマセトダイという種も場所によっては多く生息するらしいのですが、私はまだお目にかかったことがありません。
ヒゲダイやヒゲソリダイはイサキの仲間だという記述をよくネットで見かけます。
確かに、これらの魚は最近まで大手を振ってイサキ科の傘下に入っていました。
しかし、遺伝子配列(ミトコンドリアDNAの配列)を調べた結果、ヒゲダイ属はイサキ科とは全くの遠縁ということがわかり、イサキ科とは独立した「ヒゲダイ科」を新しく作るべし!と提唱されているようです※1。
どうやら「ヒゲダイはイサキの仲間」という認識は改めないといけなくなりそうですね。
※1Wei, T., Sun, Y., Zhang, B., Wang, R., & Xu, T. (2014). A mitogenomic perspective on the phylogenetic position of the Hapalogenys genus (Acanthopterygii: Perciformes) and the evolutionary origin of perciformes. PloS one, 9(7), e103011.
コメント
初めまして。ヒゲソリダイからこちらへたどり着きました。
先日、レストランでヒゲソリダイのソテーを出して頂きあまりの美味しさに検索しました。
食べるのはもちろん存在自体も初めて知りましたが、もっと早く知りたかったと思うくらい美味しかったです。
私は海なし県に住んでいるので、手に入れるのは難しそうですが頑張って入手したいと思います。
それにしても300円とは驚きの安さですね!!
初めてコメントいただいたので嬉しいです!ありがとうございます。
ヒゲソリダイを出してくれるなんて、魚好きにとってはたまらないお店ですね!
入手を検討されるならお取り寄せが手っ取り早いかもしれません。
さすがに300円ではないかもしれませんが…買う場所や手段によって値段がガラっと変わるのも魚の面白さだな~と思っています。
海なし県にお住まいとのことですが、その土地ならではの川魚など違った楽しみもありそうですね。
お勧めの郷土料理などありましたら是非教えてください。