魚のアラの食べ方にマンネリを感じたら、一風変わった江戸料理「うつし豆腐」はいかがですか?
アラと豆腐を使ったシンプルな一品ですが、魚の出汁がたっぷり染み込んだ豆腐の滋味深さは感動もの!
今回はマナガツオのアラで作りますが、どんな魚でもOK。
うつし豆腐の簡単な作り方と、江戸の粋を感じる味わいを紹介します。
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日曜日に買ったマナガツオの「まるサバごはん」、炙り刺身と天ぷらの続きです。
マナガツオの身はすべて食べ終わり、残るはアラのみ。
おろすのに失敗して骨が切れたり身がたくさん残ったりした上に、血抜きされていないため赤く濁っており、かなり状態が悪いと言わざるを得ないアラです。
おまけに仕事でバタバタしたせいで買ってから3日も経っており、臭みが出ている可能性すらあります。
失敗したままでは終われないとアラの有効活用に意気込んでいましたが、さすがに心配になってきました。
一応、キッチンペーパーで血を丁寧に吸い取り、リードとラップで包んでチルド室に入れて保存していましたが、どうでしょうか…?
恐る恐るチルド室から取り出してみると…なんと、丁寧な処理の甲斐あってか臭みは出ていません!
普通に味噌汁にしても良さそうですが、やっぱりお酒の肴がほしいな~
以前に江戸料理のお店で食べた「うつし豆腐」を作ることにします。
マナガツオのアラのうつし豆腐
うつし豆腐は「豆腐百珍」という江戸時代の豆腐専門レシピ本(!)に掲載された豆腐料理とのことです。
魚の出汁を豆腐にじっくりと染み込ませる湯豆腐に似たこの料理、魚好きであると同時に豆腐好きの私にはたまりません。
おまけに「うつし豆腐」という風情たっぷりのネーミングも酒飲みの琴線に触れます。名前の響きだけで一杯やれちゃう。
臭みは感じないとはいえ、念には念を入れてアラを200度のオーブンで30分くらい焼き、
水と酒でしばらく煮出します。
少し味見してみるとやや味が足りない感じがしたので、昆布を一切れ加えました。
どうやらマナガツオは凄く濃い出汁が出るという類の魚ではないようですね。
骨が柔らかいことにも関係しているのかな?気になるところです。
薄口醤油を回し入れ、豆腐を入れて一度グラっとしたら火を止めて冷まします。こうすることで味が豆腐の中に入っていきます。
食べる直前に沸騰しない程度に温め直し、小口ネギを散らせば完成です!
お酒は刺身と同じ弥山でしっぽり。いただきます!
・・・深い…!
マナガツオの爽やかな香りと奥ゆかしい旨味、そして少しの物足りなさを補う昆布が完璧なバランスを生み出しています。
その美味しさを豆腐を通じて味わうという小粋さがまた、魚好き酒好き豆腐好きのツボを心得ていますね~
滋味深さすら感じるじんわりとした美味しさで、汁まで残さずいただきました。
これでボロボロにされた中骨の無念も晴れたのではないでしょうか。
多少失敗しても工夫次第で余すところなく美味しく食べられるのも、「まるサバごはん」の良いところですね。
うつし豆腐はアラ汁と煮付けと鍋の良いとこ取りのような、お酒と一緒に魚の味をじっくり堪能するにはうってつけの料理だなと思います。
くどいようですが魚好き酒好き豆腐好きの私は終始心をくすぐられっぱなし。この料理を考えた江戸時代の人、ありがとうございます!
今回のマナガツオもまるごと美味しく食べられて、大満足でした♪
次はマナガツオと一緒に買ったヒゲソリダイの「まるサバごはん」です。
小話
マナガツオの仲間(マナガツオ属)の魚は日本からペルシャ湾までとても広い範囲に分布しています。
前回の記事でも触れたように、マナガツオは東南アジアやインドでも高級魚扱いされると言われていますが、実はこれらの地域のマナガツオは日本のマナガツオによく似たマナガツオ属の別種だそうです※1。
マナガツオの仲間は姿かたちがとてもよく似ているので、遺伝子配列に基づいた分類が試みられています。
ただ、その遺伝子配列すら似通っていて、未だにマナガツオの仲間が全体で何種いるのかすらはっきりしないとのこと…
「遺伝子配列を読む」なんていかにも万能そうに聞こえますが、それだけで何でもかんでもわかるというわけではないのですね。
ところで、味の違いはあるんでしょうか…気になります。
※1Divya, P. R., Mohitha, C., Rahul, G. K., Shanis, C. R., Basheer, V. S., & Gopalakrishnan, A. (2017). Molecular based phylogenetic species recognition in the genus Pampus (Perciformes: Stromateidae) reveals hidden diversity in the Indian Ocean. Molecular phylogenetics and evolution, 109, 240-245.
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