カマスの「さつま」をご存知ですか?
さつま揚げ?鹿児島の郷土料理?
…いいえ、「冷や汁」に似た大分や愛媛の郷土料理です。
普通のカマスの食べ方に飽きたなら、一度試してみませんか?
アカカマスの「さつま」の作り方と、魚の個性が濃縮された味わいを紹介します。
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金曜日に届いた大量のお取り寄せ魚を使った「まるサバごはん」シリーズ、5日目となる火曜日はアカカマスを調理します。
金曜日に三枚におろしてリードとラップで包み、チルド室で保存して熟成させたので、届いて5日目(獲れて7日目)でも臭みは全くありません。
ただ、サバく際にアニサキスが精巣にいるのを発見したので加熱調理にしたいところ。
また、帰宅がかなり遅くなってしまったのでサラッと食べられるものがいいな…
そんなことを思いつつ愛読している「旬を楽しむ地魚料理の本(野村祐三著)」を開いてみると、「カマスのさつま」なる料理が目に入りました。
耳慣れない響きですが、有名な宮崎県の「冷や汁」と似た料理。焼いた魚を味噌とすり合わせてバーナーで炙り、ぬるま湯で溶いてご飯にかけて食べる大分県や愛媛県の郷土料理だそうです。
焼いてさらに細かくすり潰すなんてアニサキス対策もバッチリですし、お茶漬け感覚で夜食にはもってこい。
今日の「まるサバごはん」はアカカマスの「さつま」に決定です!
アカカマスの「さつま」
アカカマスのサクから小骨を抜き、グリルで焼きます。
細かく切って麦味噌と和え、
すり鉢に入れてすり混ぜ、すり鉢の内側に薄く塗り広げ、
バーナーで炙ります。
焦げ目がついたら再度混ぜて同じように塗り広げ、もう一度炙ります。
湯冷まし(ぬるま湯)を入れてドロドロにし、
ご飯(今日は玄米)にかけて刻んだ大葉を散らせば、完成です!
見た目はちょっと汚いとろろ(失礼)のような感じ…お味はどうでしょうか?
・・・おいしい~~!!!
調味料は味噌しか入れていないので、アカカマスの純粋な味わいが直球ど真ん中で飛び込んできます。
丁寧に5日間熟成させたことも効いているのか、アカカマスの強い旨味が溢れんばかり。アカカマスの姿かたちは何一つ残っていないのに「カマスを食べている!」という実感をひしひしと感じます。
さらに焦げた味噌の香ばしさが食欲をそそり、堪らずご飯をおかわりしてしまいました。
今回は熱々のご飯に温かい「さつま」をかけましたが、冷や汁のように冷やして食べるのも夏場には良さそう。
もう少し水の量を増やしてサラサラの汁にしても美味しそうですね。
また、他の魚種を使ってもそれぞれの魚の個性が上手く引き出されて美味しくなりそう!
「旬を楽しむ地魚料理の本」によるとマダイやマアジ・イトヨリダイでも作られているそうなので、他の魚も是非試してみたいです。
他にも薬味を変えたり水の代わりに出汁を使ったり…シンプルな料理ですがアレンジ次第で無限の可能性が広がりそうですね。
「さつま」は一部地域の漁師料理で全国的な知名度は低いですが、魚の個性がダイレクトに楽しめる素晴らしい料理でした。
今では広く一般に親しまれている「なめろう」も元々は千葉の漁師料理だったそうですし、日本にはまだまだ名の通っていない美味しい地方料理が沢山ありそうですね。
これからも色々な料理にどんどんチャレンジしていきたいと思った一皿でした。
(大量のお取り寄せ魚を使った「まるサバごはん」シリーズ、次の記事はこちら:遅く帰った日の晩酌も楽々♪魚の大量消費にも!ホソトビウオの部屋干し干物)
おまけ:アカカマスの白子焼き
金曜日にアカカマスをサバいた時に成熟した精巣(白子)があったので、リードとラップで包んでチルド室で保存しておき、翌土曜日に白子焼きにして食べました。
よく見ると、とぐろを巻いたアニサキスがいます。
引き出してみるとウネウネ動く…
加熱するので安全面での問題はないのですが、気分的に目視できるアニサキス(2匹いました)はすべて除去し、塩を振ってグリルでよく焼けば完成です!
臭みもほぼなく、ほのかにカマスの味がしてとても美味しい白子でした。
日本酒のアテには最高です♪
!注意!
この白子は、アカカマスを含むお取り寄せ魚が届いた翌日にすぐ食べたもので、上記の「さつま」と同じ日(届いて5日目)に食べたわけではありません。
魚の内臓は傷みやすいので、自宅で召し上がる際には早めに消費するようにしてください。
また、アニサキスのリスクがあるのでしっかり加熱してから食べるようにしてくださいね。
小話
今回の精巣が成熟したアカカマスは6月に食べたものです。
アカカマスは5~8月頃が産卵期なので、辻褄が合いますね。
アカカマスの寿命は最大で約10年(!)と見積もられていますが、生まれてからの一年間が成長著しく、満1才で約25cmFL※1に達し早くも産卵し始めるようです。
その後の成長は一転して穏やかで、4才くらいまでは緩やかに成長するものの(30~35cmFL)、それ以降はほとんど大きくなりません※2。
アカカマスは1シーズンに複数回産卵する「多回産卵魚※3」なので、寿命を全うすれば長い生涯の中で何度も産卵するということになります。
「まるサバ」ライフを送っていると、成熟した生殖腺(卵巣か精巣)を持った個体に出会うことがたびたびあります。
卵巣や精巣は今回のように美味しく食べられる魚が多いですし、生殖腺の発達具合は身の味を決める主な要因なので、サバく際に取り出して観察したり調理したりするのも「まるサバごはん」の醍醐味です。(生殖腺と味の関係について詳しい話はこちら:魚の「旬」とは?旬の魚が美味しいとは限らない?意外と知らない「旬」の2つの意味を詳しく解説!)
そのときに、この魚はあとどれくらいで産卵するのかな?何度目かの産卵なのかな?一生に一度の産卵だったのかな?などと思いを巡らせると、命の恵みに対する感謝が深まるような気がします。
※1FLとは”fork length”、日本語で言うと「尾叉長(びさちょう)」のことで、口の先から尾の裂け目までの長さを指します。いわゆる全長(口の先から尾の先まで)より数センチ短くなります。
※2鹿児鳥湾産アカカマスの年齢,成長および年級群組成,増田育司ら(2003)
※3「多回産卵魚」という言葉は「1シーズンに複数回産卵する魚」だけではなく「生涯に何度も産卵する魚」という意味でも使われることがあるので、ちょっとややこしいです。
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