大きな魚を自宅でサバくのってロマンがありますよね!
ただ、考えなしにいきなりサバき始めてしまうと、大きすぎて手持ちの出刃包丁では「刃」が立たなかったり、なんとかサバけても食べ切れない…なんてことになってしまいます。
そこで、この記事では以前にご紹介した「大量の魚を美味しく食べ切るための3ステップ」の応用編として、大きな魚を美味しく食べ切るためのサバき方と保存方法をご紹介します。
扱う魚は、対馬の漁師・銭本慧さんから送っていただいた7.8 kgの天然ブリです!
大きめのアボカドと並べてもこの大きさ…テンション上がりますね~!
はやる気持ちを抑えて、まずは「大量の魚を美味しく食べ切るための3ステップ」のおさらいです。
「大量の魚を美味しく食べ切るための3ステップ」のおさらい
3ステップをざっくり要約すると、
(1)計画を立てる
(2)すべての魚を下処理し、保存する
(3)傷みやすい魚から順に食べる
です。
詳しい内容はこちらからどうぞ。
大きな魚を扱う際も基本的にはこの3ステップと一緒で、(1)「計画立て」を魚の部位を基準に行えばOKです。
具体的には、今回のブリでは以下のように(1)「計画立て」を行いました。
「計画立て」の具体例(ブリ)
ブリの身を下図のような12のサクとアラに分けて考え、
次のような計画を立てました。
部位 | 処理 |
前と中央の8サク(1~4, 7~10) | 生食および加熱用に熟成処理 |
後の4サク(5, 6, 11, 12) | 保存処理 |
頭 | ブリ大根 |
背骨 | 出汁要員として保存 |
カマ | 加熱用に保存 |
内臓 | 煮付け |
この計画をもとに、以下のように(2)「下処理と保存」を行います。
「下処理と保存」の具体例(ブリ)
ブリをサバく
ウロコをすき引きして、
頭と尻尾を落としたら、
3つにぶつ切りにします。
これにより、前・中・後の3パーツに分かれ、三枚におろしやすくなります。
3パーツに分けずに一度に全体をサバこうとすると、力や広いスペースが要りますし、そもそも家庭用の出刃包丁では難しい…
その後の取り扱い易さを考えても、最初にぶつ切りにしてしまうのがオススメです!(ただ、熱烈なロマン派の方に関してはこの限りではありません)
ぶつ切り後、各パーツを三枚におろすと、背骨を中心に右半身と左半身に分かれて6パーツになります。
これをさらに背側と腹側に分けると、前述のように12サクに分割できます。
前のサク(1, 2, 7, 8)の処理
刺身で食べて一番美味しいのは脂が乗っている前の腹側(2, 8)なので、これらのサクは刺身に回します。
背側(1, 7)は腹側と比べると脂がありません。刺身は刺身でも、ほど良い脂乗りが香りを引き立てる「紅菊盛り」にするのがオススメです。
いずれにしても、血や汚れをキッチンペーパーでよく拭き取り、
リードで全体を覆い、さらにその上からラップで包んで、チルド室で保存します。
後から識別できるように、部位の名前を書いておきます。
中央のサク(3, 4, 9, 10)の処理
中央の背側(3, 9)は脂乗りが薄めで加熱向きの部位です。
中央の腹側(4, 10)は前の腹側(2, 8)に続いて脂乗りが良いので、刺身で食べたいところですが…
「ブリ糸状虫」という寄生虫を見つけました。
アニサキスと違って人体に害はありませんが、身に空いた穴のせいで刺身の見栄えが悪くなるので、加熱して食べた方が良いですね。なんとなく気分的にも…
上と同じようにリードとラップで包み、虫がいた旨を書いてチルド室に入れます。
後のサク(5, 6, 11, 12)の処理
後のサク(5, 6, 11, 12)は、背側/腹側を問わず全て保存処理します。
この部分は脂乗りが一番薄く刺身に向きませんし、高確率で先ほどの寄生虫がいるからです。
保存処理として、今回は「西京漬け」と「幽庵漬け」にすることにしました。
サバき始める前に味噌床や幽庵地を作っておいて、サバいて血や汚れを拭き取ったらすぐに漬けます。
サバいてから味噌床や幽庵地を作ろうとすると、サバき疲れて億劫な上に、ウロコや血で汚れた台所や調理器具を片付けなければならずさらに億劫に…。アルコールを飛ばした酒や味醂を冷ます時間も勿体ないですし、正直あまり良いことがありません。
サバく前なら台所が綺麗な状態で作ることができますし、アルコールを飛ばした後の熱もサバいている間に冷めて効率的です。
漬けて2~3日経ったら、真空パックにして冷凍します。
この様子は別の記事で紹介しますね。
アラの処理
身の処理が終わったらアラに取りかかります。
一口にアラとは言っても、大きなブリなのでアラも大きいです。
身と同じようにパーツごとに処理します。
頭の処理
頭はブリ大根にします。
作って数日は持つので、これも保存処理の一環です。
出刃包丁やハサミを駆使して頭を小さく分割し、
血や汚れを拭い取り、そのままブリ大根を作り始めても良いのですが…
いい加減お腹が空いてきた
…取り敢えず冷蔵庫に入れておきましょう。
ボウルにリードと頭をミルフィーユ状に交互に重ねて、最後にラップをします。
パーツを一つ一つ包むよりラクでリードも節約できますし、調理で取り出す時も簡単なのでオススメです。
最後に名前を書いて、冷蔵庫へ。
背骨の処理
この図では背骨は一つに繋がっていますが、実際には身を3つにぶつ切りにした段階で背骨も3つに分かれています。
ブリしゃぶの出汁にするために、ひとまず冷蔵庫に入れておくことにします。
頭と同じようにリードと骨を重ねてボウルに入れ、冷蔵庫へ。
カマの処理
このサイズの魚だとカマも大きく脂がたっぷり乗って、大ご馳走になります。
血や汚れをよく拭き取って、リードとラップで包んでチルド室へ。
チルド室は最終的にこんな感じになりました!
ちなみに、今回はハチビキも同時に処理していたので…
今までの写真にもところどころ見え隠れしていますよ。
内臓の処理
最後に内臓を処理します。
といっても、あらかじめ抜いた状態で送っていただいたので、綺麗に洗って煮付けるだけです。
これは次の記事で紹介しますね。
まとめ
以上で「大量の魚を美味しく食べ切るための3ステップ」を大きなブリに応用した(1)「計画立て」と(2)「下処理と保存」が完了です。
残りは(3)「食べる」だけですが、なかなか波乱万丈な道のりでした…
これから順次紹介していきますね。
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