毒ビレと磯臭さで敬遠されがちな「アイゴ」。
加熱する食べ方が主流ですが、実は生でも美味しい魚です。
刺身ではアイゴの個性ある香りをダイレクトに楽しめ、伊豆諸島の郷土料理「べっこう漬け」にすれば洗練された味わいを堪能できます。
アイゴの刺身とべっこう漬けの簡単な作り方と、食べ比べた感想を紹介します。
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お取り寄せ魚を使った土曜日の「まるサバ」パーティー、ニザダイの洗いの次はニザダイと同じく足が早そうな「アイゴ」に決定!
昨日煮付けにした残りの半身を生で食べてみようと思います。
磯臭さのあるアイゴなので、刺身だけではちょっと不安…同じく磯の香りが強いメジナで作られることの多い伊豆諸島の郷土料理「べっこう漬け」も併せて作ってみます。
煮付けでは臭みに隠れた初めての美味しさに驚かされましたが、果たして生食の実力はいかに?
アイゴの刺身・べっこう漬け
昨日からリードとラップで包んで脱水しておいたアイゴの半身を刺身状に薄く切り、半分はそのまま刺身に、もう半分は漬けダレに2~3分漬けます。
漬けダレは煮切った酒とみりんに醤油と青トウガラシを加えるだけ。
キッチンペーパーで水気を拭き取り、お皿に盛れば完成です!
昨日の煮付けでアイゴの美味しさは折り紙付き。多少の臭いは感じますが恐るるに足らずといったところです。
まずはべっこう漬けから、いただきます!
・・・!?
昨日でアイゴの臭いには慣れたと思っていましたが、甘かったようです…
あまりにも異質な臭いに、一口目はやはり面食らってしまいます。
ただ、煮付けと同じように、臭いに慣れる二口目以降は芳烈な香りと濃厚な味にどんどん魅了されていきます。
少しずつわかってきました。アイゴは私たちが普段食べている魚とはあまりにも違う独自のアイゴワールドを築いているようです。
これを楽しみたいのであれば「郷に入っては郷に従え」。
いつもの価値観で味を判断するのは野暮というもので、その世界観にどっぷり浸って身をゆだねれば、アイゴでしか感じられない唯一無二の美味しさが少しずつ見えてきて…
いつの間にかメロメロになっています。
アイゴワールドの基準で考えると、昨日の煮付けと比べてべっこう漬けは洗練された一品という印象。
べっこう漬けはメジナなどの磯の香りが強い魚と相性が良い調理法ということもあり、アイゴの磯臭さを適度に包み込んでいるようです。
また、アイゴをしばらく噛んでいるとちょっとツンとした味を感じるのですが、そのツンと感じるタイミングと漬けダレのトウガラシの辛みが口の中で出てくるタイミングが重なり、全体のまとまり感の向上に一役買っています。
一方、刺身はアイゴの臭いを強く感じ、べっこう漬けと比べると粗削りな味わい。
ただ、昨日の煮付けよりはずっと爽やかですし、アイゴの香りをダイレクトに感じられる面白さがあります。
煮付けは熱の力で臭いがモワっと立ち上り、鼻も口の中も強烈なアイゴ臭に支配されます。それでも次第に病みつきになるから不思議なのですが、今回試した3つの調理法の中では最も玄人向けと言えると思います。
料理としての完成度はべっこう漬けが最も高く、私が一番美味しく食べられたのもべっこう漬けでした。
初めてのアイゴ料理はべっこう漬けからチャレンジしてみると良いかもしれません。
お取り寄せ魚の「まるサバ」パーティー、さらに続きます。(→次の記事:「まるで味のカメレオン?トビウオ2種を食べ比べ!ホソトビウオとツクシトビウオのたたき・絶品つみれ汁」)
小話
アイゴは美味しいですが、独特の臭いがあります。
これについて、愛知県の水産試験場による面白い報告※1を見つけました。
この報告ではアイゴとスズキの筋肉(つまり普通に食べるところ)の臭いの強さを比較しています(しかも−20℃で冷凍した後に解凍したものを使って…臭そう!)。
スズキもまぁまぁ臭みがある魚だと思いますが、それでもアイゴはスズキよりも2倍くらい臭いが強いそうです。
どうしたらその臭いを低減できるかを調べるために、筋肉を蒸留水(普通の水に相当)・クエン酸(レモン汁に相当)・酢酸(お酢に相当)につけて、何もしなかったものと臭いの強さを比較しています。
この結果、蒸留水やクエン酸につけることで臭いがかなり抑えられることがわかったそうです(酢酸だと場合によっては臭いが強まるんだとか笑)。
蒸留水につける、というと大げさに聞こえますが、要は「洗い」の処理です。
実際に、愛知県の民宿ではアイゴを洗いにして提供しているところもあるらしく、この臭みの抜き方は古くから生活の知恵として産地の人には知られていたのかもしれません。
今回は煮付けと刺身とべっこう漬けでアイゴ一匹を食べ切りましたが、また良いアイゴが手に入ったら洗いも試してみたいな~♪
クエン酸(レモン汁)も良いということなので、カルパッチョなんかも美味しいかもしれませんね。
※1アイゴSiganus fuscescensの食品としての特徴(筋肉のエキス成分)と魚臭低減化方法,蒲原聡ら(2008)
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