ひれ酒といえばフグがあまりにも有名ですが、同じく高級魚の天然クエのヒレでひれ酒を作ってみました。
フグのひれ酒に迫る美味しさとなるのでしょうか?
オーブンを使ったひれ酒の簡単な作り方と、ひれ酒の醍醐味を紹介します。
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天然クエの「まるサバごはん」、クエチゲの続きです。
内臓もウロコも身もアラも、クエの食べられるところはすべて食べ終えましたが、まだ残っている部位があります。
それは…
ヒレです!
肉厚でいかにも良い味が出そうなヒレだったので、クエをサバいた日にひれ酒用に加工しておきました。
天然クエの「まるサバごはん」、最後を飾るのはひれ酒です。
クエのひれ酒
ひれ酒といえばフグですが、私はどんな魚でも美味しそうなヒレは取り敢えずひれ酒にしてみます。
本来なら屋外で1週間ほど陰干ししてしっかり乾燥させるのですが、今回は雨が続く予報だったので、簡易的なオーブン干しで作ることに。
ヒレを軽く塩もみしてヌメリを取り、
半分に開いて、
低温のオーブンで乾燥させます。
そのうち1枚をさらにオーブンで炙り、
器に入れて熱燗を注げば、クエのひれ酒の完成です!
クエ鍋やクエチゲでのアラ出汁の旨味が素晴らしかったので、ひれ酒にも期待してしまいます!
さっそく一口ぐびり。
・・・
・・・
・・・美味しい!
美味しいけど、、、旨味はフグのひれ酒を半分にしたくらいかな?
実はフグ以外の魚でひれ酒をするといつも思うのですが、フグのひれ酒が圧倒的に美味しくて、他はだいたい同列の無難な美味しさに落ち着くんですよね。
フグのひれ酒は、口に含むと旨味が何重にも広がって、どんどん奥行きを増していくような味わい深さがあります。
一方、今まで試した他の魚は、出汁は多少なりとも出ますし香ばしさも加わって普通に美味しいひれ酒にはなるものの、旨味は口に含んだ瞬間がピークで、その後はストンと落ちて無くなってしまうような感じ。
いくら高級魚クエといえどもその例に漏れずというのが、今回のクエのひれ酒の率直な印象です。
思うに、フグのひれ酒はれっきとした「フグ料理」。
対して、クエを含む他の魚のひれ酒は「ヒレを浸した熱燗」の域を出ないような気がしますね…
ただ、そもそもこの手の料理には味だけを求めている訳ではありません。
貴重な天然クエを自分でサバき、あらゆる部位を多彩な料理にしてまるごと味わう、その得難い経験の一部としての、純粋な楽しみでもあります。
フグのひれ酒以上のひれ酒はないということは薄々わかっていながらも、この楽しみがあるからこそ、色んな魚のヒレをせっせと干すのを止められないのだな~と思います。
・・・なんだか良いことを言った気がしたところで、天然クエの「まるサバごはん」は完結です。
小話
今回いただいたクエは天然魚ですが、実はクエは意外とメジャーな養殖対象種です。
養殖魚でも美味しくて単価が高いのですが、生産者にとっては問題があります。
それは、成長が極端に遅いこと。
1㎏以上の出荷サイズに育つのに3~4年もかかるそうです。
それまでに発生する餌代やクエが死んでしまうリスクを考えると、もっと早く育つような育種を生産者が望むのは当然と言えるでしょう。
そこで、成長がクエより早く、クエよりもさらに大きく育つ「タマカイ」に白羽の矢が立ちました。
タマカイとクエを交雑して、より早く成長する雑種を作ろうというのです。
この雑種を稚魚くらいまで飼育したところ、クエの倍に近い成長を示しました。
ただ、生き残りが悪いなど、まだまだ課題はあるそうです。
ところで、気になるのは味ですよね…
タマカイもとても美味しいらしいので、さぞかし美味しいんだろうな~!
<参考文献>
Murata, O., Itakura, S., Yamamoto, S., Hattori, N., Kurata, M., Ohta, H., & Masuma, S. (2017). Interspecific hybridization of longtooth grouper Epinephelus bruneus× giant grouper E. lanceolatus and growth of hybrid larvae and juveniles. Aquaculture Science, 65(1), 93-95.
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