たくさんの魚が手に入って食べ方に困ったら、一部を干物に加工するのがオススメです 。
庭やベランダや干し網がなくても大丈夫。
「部屋干し干物」なら、特別な道具を使うことなく誰でも簡単に家の中で干物を作ることができます。
手作り干物を冷凍保存して、忙しい朝や遅くに帰宅した夜に手軽に魚料理を楽しんでみませんか?
この記事ではホソトビウオの部屋干し干物の作り方と上手な保存方法・食べ方を紹介します。
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金曜日に届いた大量のお取り寄せ魚を使った「まるサバごはん」シリーズ、6日目となる水曜日は飲み会でお休み。
熟成中のアカハタとカサゴを包んでいるリードだけ帰宅後に取り替えました。
7日目の木曜日も仕事が長引き、帰宅が遅くなってしまいました…
でも大丈夫!こんな日でも「まるサバごはん」を楽しめます。
今日は先週の金~日曜日にかけて作って冷凍保存しておいた「ホソトビウオの干物」でお手軽に晩酌することに。
ホソトビウオの部屋干し干物
金曜日
大量のお取り寄せ魚が届いた金曜日、トビウオ類5匹のうちホソトビウオ3匹を干物に加工することにしました。
(残りの2匹の記事はこちら→「まるで味のカメレオン?トビウオ2種を食べ比べ!ホソトビウオとツクシトビウオのたたき・絶品つみれ汁」)
冬だと干し網を使って外で干しますが、今は6月。
衛生面の心配があるので、冷蔵庫と扇風機を使って「部屋干し干物」を作ります。
まず、ホソトビウオを背開きにしてエラと内臓を取り除き、背骨の裏の血合い(腎臓)を綺麗に拭い取ります。
飽和食塩水に魚醤をひとたらし加えて塩汁(しょしる)を作り、ホソトビウオを15分くらい漬けます。
築地魚河岸三代目の干物屋「干青」の親父さん曰く「同じ塩汁に塩と水を足しながら使い続けることで魚のエキスが溶け込み、干物に深い味わいを与える」そうです(築地魚河岸三代目11巻のFish 7「手塩にかけた干物(後編)」参照)。
これをするためには塩汁を毎日煮立てるかマイナス零度で常に攪拌する必要があるようなので、一般家庭ではとても真似できません…
塩と魚で作った発酵調味料である魚醤を入れれば同じような効果が得られるのでは?と思い、私は塩汁に少しだけ魚醤を加えることが多いです。
こうすることで旨味がプラスされますが、入れすぎると魚醤味の干物になってしまうので注意です。
バットの上に魚焼きグリルの網とホソトビウオを載せ、そのまま冷蔵庫に入れて乾燥させます。
魚を載せるのはザルやカゴ・ケーキクーラーなど、魚との接触面積が小さいものなら何でも大丈夫です。
今回は金曜夜から日曜夕方まで二日弱冷蔵庫に入れっぱなしにしておきました。
半日~1日くらいでも十分なのですが、土曜日はお取り寄せ魚の「まるサバ」パーティーで忙しく干物まで手が回らなかったので…笑
日曜日
日曜夕方、扇風機に1~2時間くらい当ててさらに乾燥させます。
冷蔵庫だけでも良いですが、私は表面をカラっと乾燥させるために最後の仕上げとして扇風機を使っています。
日曜日に作った簡易燻製用のニザダイも一緒に乾燥させました。
真空パック器で真空パックにし、冷凍庫で保存します。
干物に限った話ではありませんが、ラップやジップロックで食品を長期間冷凍保存すると、どうしても冷凍庫の臭いがついたり酸化が進んだりして味が落ちてしまいます。
短期間の保存なら良いのですが、例えば巷で話題の「週末作り置きおかず」も数日内に食べ切ることが意外と難しかったりしますよね。食べようと思っていた日に予定が入ったり、気分じゃなくて他のものを食べてしまったり…
真空パックにすれば美味しさを損なうことなく長期間冷凍保存できるので、早めに食べ切らなきゃ!というプレッシャーから解放されて、忙しい日や夕飯を作るのが面倒な時にいつでも簡単に美味しい魚を食べることができます。
実際にハチビキのみりん干しを真空パックにして(存在をすっかり忘れ)半年後に食べたことがありますが、作った時と変わらぬ美味しさを保っていました。
家庭用の真空パック器、オススメです!
木曜日
さて、遅く帰った木曜日の夜。ホソトビウオの干物を真空パックから取り出して凍ったまま魚焼きグリルで焼けば、あっという間に完成です!
綺麗な艶が出て美味しそう…いただきます!
・・・おいし~い!!
脂は全く乗っていないものの、しっかりとした旨味を感じます。
他の干物に比べて味の持続時間が長いような…咀嚼して呑み込んだ後も旨味が口の中にずーっと留まっています。
そのおかげでお酒が進む進む~
身離れが良く、筋節に沿ってポロポロと剥がれるので食べやすい!
頭が小さく歩留まりが良いですし、その頭まで柔らかいので頭ごとボリボリと食べられます。
小骨も柔らかく全く気になりません。
これは…中骨も焼き直せば食べられそう!
中骨だけ取り出して焼いてみると…
うん、おいしい!
瓦せんべいのようなバリっとした歯ごたえが楽しく、味も濃いので日本酒のアテにぴったり!
同じダツ目なのも関係しているのか、どことなくサヨリの骨の塩焼きに相通じる美味しさを感じます。
頭の先からしっぽの先まで余すところなく美味しく食べられる、優秀な干物でした。
おまけ:2か月後のホソトビウオの干物
冷凍保存しておいた残りのホソトビウオの干物を2か月後に食べました。
真空パックのおかげで、やはり臭みや味の劣化は全く感じません。
ただ、うっかりしていて焼きすぎてしまい、それでなくても乗っていない脂が完全に落ち切ってまるでジャーキーのような食感に。
適度に焼いた時の食べやすさは無くガジガジ噛み切るような食べ方になりましたが、真夏のビールと合わせるには豪快で良い感じ。
噛むとギュッギュッと味が出てきますが、焼きすぎたからかホソトビウオの旨味成分は鳴りを潜め、代わりに「もの凄く美味しい塩気」が出てきます。
普通の干物だと「塩が魚の味を引き立てる」ところを、逆に「魚が塩の旨味を引き立てている」とでも言いましょうか。
ホソトビウオ独特の味わいやクセなどは感じられず、素直な海水魚の味、いわば海のような味がします。
同じ干物でも焼き方一つでこんなに変わるなんて、面白いですね。
平日の「まるサバごはん」に欠かせない保存食である干物。
これからもその美味しさを探求していきたいと思った一皿でした。
(大量のお取り寄せ魚を使った「まるサバごはん」シリーズ、次の記事はこちら:ハタは酒蒸しだけじゃない!1匹まるごと味わい尽くす5品の熟成アカハタ料理)
小話
「トビウオ」は読んで字の如く水上を飛ぶことで有名な魚です。
最長飛行距離は400m、最高速度は70km/hに達します。
「飛ぶ」というと鳥のように空高く舞い上がり空中を自在に移動するようなイメージを抱くかもしれませんが、実態はちょっと違うようです。
トビウオが海面から出ると、まずは下に長く伸びた尾びれで海面を叩きながら加速し、離水した後しばらく滑空します。
スピードが落ちると同じように海面を叩き、水中に落ちることを防ぎます。
飛ぶ高さはあまり高くなくせいぜい尾びれの幅と同じくらい。一度飛び上がると後は降下するだけでそれ以上高度が上がることはないので、トビウオの飛ぶ軌跡は海面とほぼ平行になります。
「飛ぶ」というよりも「海面を走る」という方が近いかもしれませんね。
トビウオが飛ぶ理由は「水中の捕食者からの逃避」や「移動コストの節約」などが考えられていますが、本当の理由はよくわかっていないようです。
魚好きが高じて色々と調べていると、魚の生態で分かっていることよりも分かっていないことの方がずっと多いことに驚かされます。
トビウオの生態も今後どこまで解明されていくのか、楽しみですね。
<参考文献>
Park, H., & Choi, H. (2010). Aerodynamic characteristics of flying fish in gliding flight. Journal of Experimental Biology, 213(19), 3269-3279.
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